ジョージオーウェルの書いた本ではおそらく一番よく知られているのではなかろうか、という本。

社会主義革命成立後のソビエトを農場に見立て、その腐敗していくさまを描いている。

この物語は、年老いた豚である「メージャー爺さん」の見た夢と、予言から始まる。

この物語に登場する動物たちの多くは、あまり賢くなく、ゆえに爺さんの煽動的な演説に魅了されてしまう。

最も煽動的な文句は、「人間こそ、我々の唯一の、真の敵である」である。人間は碌に働きもせず、彼ら動物を利用することで、豊かな生活を送っていると批判する。本書でいう「人間」は現実の世界でいう「資本家」 であり、動物は「労働者」である。そしてついに動物たちは反乱を起こし、荘園農場は動物農場へと名前を変える。

そしてここからが本書のテーマである(と思われる)。社会主義革命を成し遂げた後の社会主義国内での権力闘争と、支配者階級の腐敗が描かれている。

人間が去った後の農場を支配したのは豚であった(メージャー爺さんは反乱前に死亡)。最初は動物皆で話し合って農場の運営方針などを決めていたのだが、 次第に他の動物よりも賢い豚が、権力を奪い、そして堕落していく。最初に動物たちで決めた取り決めも、ほかの動物たちが賢くないのをいいことに、改変が加えられていく。
そしてもっともらしい理由をつけながら、豚は動物達よりも良い生活をし、「搾取」をするようになっていく。

そして最後は動物達から見て、「豚」と「人間」の区別がつかなくなるという件でこの物語は幕を閉じる。労働者の一員であったはずの「豚」が、気が付いたら資本家である人間と何も変わらなくなってしまったというのは面白い。

この本は権力内部の腐敗を痛烈に皮肉ったものだが、今の日本に当てはめて読んでみるともっと面白い。この農場で起きていることは、実は今の日本でも同様に起きているのではないかと感じてしまう。


この本の中で最も愚かで、可哀そうな存在であるのは、賢くないゆえに豚を独裁者に仕立てあげてしまった動物たちである。

この物語に登場する豚は確かに狡猾である。内に問題を抱えると外に敵を仕立てあげ、現状の悪い部分を見えなくさせる手法は、長い歴史で多くの国が実際に用いてきたし、現在でもそれは変わらない。

物語の中では、動物たちが革命後いつまでも向上しない自分たちの生活状況に対して、疑問を呈する場面は度々描かれている。それにも関わらず、豚たちが安穏と権力を握り続けたのは、結局哀れな動物たちが声を上げなかったからなのだ。(正確に言うと上げられなかった、のほうが正しいが。豚は犬という軍事組織を持っていた)

豚のやることに疑問を抱いても、結局はそれに臣従してしまう、多くの哀れな動物たちこそが、この物語の中で最も愚かな存在であったのではないだろうか。

この本は私に、政府が腐っているのは、我々国民が賢くないからではないか、という問題意識を抱かせてくれる。